目標は50代でスーツを着こなすかっこいい女性
4年ぶりに復帰し、マネージャーとなる
鈴木が現在担っているのは、マーケティング部門でインサイドセールス部隊を取りまとめるポジション。ここにたどり着くまでの道のりは、実にさまざまなものに彩られている。強さとしなやかさが持ち味の、鈴木らしいキャリアストーリーである。
鈴木 「2011年に新卒で入社しましたが、営業部に3年務めた後、一度退職しました。海外で、今までとは異なる環境に身を置いて生活したいと思ったことが理由のひとつです。勢いのままカナダ・バンクーバーに語学留学し、帰国後は半年ほどゆっくり『スイートニートライフ』を送りました。その後はインセンティブ制度のあるところで働きたいと思い、外資系のネスレに就職。営業職を1年半、マーケティング職を1年半経験したあと、縁あって4年ぶりにウイングアーク1stに戻ってきました。いわゆる『出戻り組』です」
実はそれなりに出戻り組がおり、彼らを温かく迎え入れる文化があるのもウイングアーク1stの特長のひとつだ。鈴木は営業職を軸に就職活動していた学生時代から「ウイングアーク1stの社員の人当たりの良さに惚れ込んでいた」という。
鈴木 「退職後も、OJTでお世話になった先輩をはじめとした人間関係が続いていたので、会社の状況は常に把握していました。そんな流れでマーケティング部門から声をかけてもらって、再入社することになりました。マーケティングの経験はネスレでの1年半のみです。けれども、ネスレではマーケティングを上位に置く営業戦略に興味を持ち、目線を高めたセールススキルを習得したいと、マーケティング部門への社内公募に手を挙げた経験があります。世界的にも評価されているネスレのマーケティング戦略の一事業に関わらせてもらったこと、経験させてもらったことの一つひとつが糧になっていると信じています」
鈴木は2018年11月に再入社すると、翌年5月には早くもインサイドセールスのチームリーダーに抜擢された。8月には組織改編によりグループマネージャーに、翌3月には部長へと昇格し、20名のメンバーを取りまとめている。
「今、モヤモヤしていることはありますか?」から始まる1on1
鈴木にとってマネージャー職は初めての経験だが、「チームメンバー一人ひとりが好き。気持ちよく働けています」と嬉しそうに話す。
鈴木 「新卒で入社したばかりの社員から中途採用組、子育てと両立しながら働いている方など、さまざまな面々で構成されています。わたしのチームは一人ひとりがお客様のためになることをしたいという意思が強い集団だと思っています。もちろん、それに対する努力も時間も惜しまず、責任をもって仕事をしています。私自身はグループ全体での目標達成と、なおかつ彼女彼らの成長を促進できる役割を担い、日々取り組んでいます」
そのためにチームメンバーと向き合う時間も大事にしている。膝を突き合わせて話す1on1ミーティングの時間は1人につき月に1時間ないしは30分。「今、モヤモヤしていることはありますか?」と切り出し、寄り添いながら臨んでいる。
鈴木 「1on1では今後なりたい姿や習得したいスキル、歩んでいきたいキャリアを会話の中から引き出し、それに対して必要な要素をできるだけ提示するよう心がけています。メンバーそれぞれの将来像が今の業務に即しているかどうか、再確認してもらいたいからです。モチベーショングラフを書いてもらうこともあります。どういう時に落ち込んでいるかを認識することも自身の成長に繋がっていくため、できるだけ率直に話してもらいたくて『今、モヤモヤしていることはある?』といった声掛けから始めています。その答えによっては今抱えている課題感を解消することが優先されるのか、モチベーションを上げることが大事なのか、一人ひとりに合わせて考えていきます」
インサイドセールスチームに一定期間配属される新人教育の場面では、メンバーの成長に喜びを感じる瞬間が多いという。
鈴木 「入社2~3年目のメンバーが新卒社員の教育プログラムを設計し、それを実行していくなかで、教えている側の成長も見ることができます。一方、社会人って大変…と感想を漏らしていた新卒社員がインサイドセールスチームに正式配属され、改めて今の心境を聞いたところ、『教育プログラムで学んだことが活きている』と答えてくれたのも嬉しかったです」
鈴木はチームメンバーとしっかり向き合うことで、共に喜びあえる理想の上司像を丁寧に築き上げている。
猛反対した家族も泣いて喜ぶ成長した姿
颯爽とスーツを着こなし、真摯な姿勢で仕事に取り組み、一見隙のなさそうな鈴木が素の顔を見せたのは、ストレス発散法を話した時だ。
鈴木 「おいしいものを食べることが好きです。お酒も嗜みます。誰かと一緒の時は何が食べたいかにそうこだわりませんが、1人の時はとにかくこれが食べたい!と思うので、一人焼肉も楽しむことがあります。食べたいものを食べることで、ストレスを発散させることができるからでしょうね(笑)」
人間味に溢れた鈴木のそんな姿には、こうと決めたら実行する生き方も反映されている。もともと鈴木は理工学部機械工学科出だ。大学院に進むことを選ばず、学部卒で社会人になると決めた時から「50代でカッコよくスーツを着こなす女性を目指したい!」と目標を定めて突き進んでいる。
鈴木 「直感で決めるところも多く、はじめに営業職を選んだのも企業の花形だったから。でも、静岡の伊豆に住む両親からは強く反対されました。というのも、製薬会社の配置薬セールスの方が来ると、厳格な祖父がよく『そんなものは要らない!』と強く跳ね返していました。だから、そんな頑固な人に当たっても、めげずに頑張る仕事が営業というイメージが我が家ではありました。つらい仕事だと思っていたんでしょうね。だから『営業職はやめなさい』の一点張りでした。それでも私の中では気持ちが揺らぐどころか、映画『プラダを着た悪魔』でメリル・ストリープが演じた編集長・ミランダ役に憧れを抱いていたので、『50代でカッコよくスーツを着こなすようになるために営業職の道から始めようと心に決めていたので、迷いはありませんでした」
猛反対していた家族も今では鈴木の活躍を応援してくれている。
鈴木 「仕事のことも日ごろから家族によく報告しています。先日、会社のイベントで登壇させてもらう機会をもらったと話したところ、母と祖母がその姿を見に行きたいと申し出ました。その時はさすがに断りましたが(笑)今の姿を少しでも見てもらいたいという気持ちもありました。その時の様子が録画されていたので、後日祖父母に見せに行ったところ、泣いて喜んでくれたんです。こんなふうに家族が応援してくれるから、一層頑張れます」
インサイドセールスが持てる価値はまだまだある
社内において、鈴木は今後ますます活躍が期待されている人材のひとりだ。自身はどのような役割が求められていると分析しているのだろうか。
鈴木 「いかに効率化を図りながら商談の場を作り、売り上げに貢献できるか。それを追求していくことが求められていると思っています。問い合わせに関してはインサイドセールスチームが一旦引き受けます。業務範囲が広がり、営業の効率をまだまだ見直せると感じています」
つまり、営業とマーケティングの両方の視点から製品セールス施策を考えていくことが課題のひとつであるということだ。
鈴木 「極端な話、いつインサイドセールスチームが解散してもおかしくないという危機感も持っています。だからこそ、営業とマーケティングの関係をより強固にして、インサイドセールスの持つ価値を見出していきたい。そして、それをウイングアーク1stのビジネスに沿わせながら、いかに最大化させるかを常に意識しています。具体策については悩みどころですが、まずはインサイドセールスと営業の間にある、必要のない壁は取り払っていきたいと思っています」
そのための解決の糸口のヒントは、他社から得ることもあるという。
鈴木 「インサイドセールスチームが50人以上の規模で構成されている企業は、いろいろな施策をすでに打ち出しています。外部のセミナーや交流会で知り合った方から、参考になりそうな話を積極的に聞いています。また、インサイドセールスが立ち上がったばかりの他社の方を紹介されることもあり、その際も情報交換は欠かせません」
目下、やるべきことに向かってエネルギッシュに邁進中といった様子だが、今後のキャリアビジョンもしっかり見据えている。
鈴木 「今はやるべきことがあり、これだけ楽しいと思って仕事できることに幸せを感じながら毎日過ごしています。楽しくできるうち、達成したいことがあるうちは転職する気はありませんが、ずっとこの会社じゃないとダメだと思っているわけではないことも正直な気持ちです。営業やマーケティングに執着するつもりもありません。とにかく新しいことに飛び込んでいくことが好き。ただ、今は自分のいる場所がとても楽しいと素直に思えています。50代でカッコよくスーツを着こなす姿にも近づくスピードが上がってきたと感じています」。
鈴木の話しぶりはあくまで控え目だが、言葉は自信に満ち溢れ、限りない伸びしろがあることを思わせた。
(2020.06)